表層と深層と、どちらも学ぶから、みんなおもしろくなる
大谷翔平選手の曼荼羅チャートから考える、勉強で本当に身につけたい力
大谷翔平選手が高校時代に作成した「曼荼羅チャート(目標達成シート)」は、よく知られています。
中心に置いた目標は「ドラ1 8球団」。その実現に必要な要素として、周囲に8つの項目を配置し、さらにそれぞれを具体的な行動へと展開していくものです。
このチャートは、とてもよくできていると思います。
目標の立て方が明確で、それを具体的な行動に落とし込んでいることも素晴らしいのですが、私が特に注目しているのは、最初の8項目の選び方です。
専門的なことが4つ、一般的なことが4つ
大谷選手が挙げた8項目を、私なりに分けてみると、次のようになります。
投手としての専門的な項目
スピード160km/h
コントロール
キレ
変化球
もっと一般的な項目
体づくり
メンタル
人間性
運
ちょうど4対4です。
もちろん「体づくり」はスポーツに直接関係しますし、「運」はほかの項目とは少し性格が違うかもしれません。この分類は、あくまで私なりのものです。
それでも、ここに大きな意味があると思っています。
普通、野球で大きな目標を立て、そのために必要な要素を8つ挙げようとすれば、どうしても野球の技術に関することが中心になるのではないでしょうか。
しかし、大谷選手のチャートでは、投手としての技術に関することは半分だけです。
残り半分には、野球以外の分野でも大切になることが並んでいます。
このバランスのよさ、視野の広さが、とても印象的です。
しかも、それらを補足事項として付け加えているのではありません。専門的な項目と同じ位置に、同じ重みで並べています。
私は、ここが特に参考になると思っています。
勉強でも、同じようなことを考えています
実は、私が日頃の個別指導で心がけていることも、これに似ています。
塾ですから、当然、学校の勉強や受験に必要な知識・技能を教えます。
一つひとつの問題について、なぜその答えになるのかを考え、単元の内容を理解し、科目全体のつながりを整理する。そうしたことは丁寧に指導しています。
しかし、私が意識していることのうち、それは半分ほどです。
残りの半分では、個々の問題や単元、科目の学習を通じて、もっと広い場面で役立つ力を養うことを目指しています。
大きく分けると、次の4つです。
1.基本的な頭の動かし方
例えば、
一つのものを分割して考え、また全体として統合する
物事を階層化・構造化して整理する
条件をそろえて、比較・対比する
対象を固定して、時間の変化を追う
原因と結果の関係を考える
といったことです。
国語、数学、理科、社会など、それぞれの教科には固有の知識や考え方があります。
しかし、その土台で使っている「頭の動かし方」には、驚くほど多くの共通点があります。
一見、まったく違う問題に取り組んでいるようでも、実は同じような思考の操作をしていることが少なくありません。
そして、基本となる操作の種類は、思っているほど多くないのです。
個々の問題を解きながら、こうした共通する思考の方法を意識し、使いこなせるようになることを大切にしています。
2.マネジメントスキル
勉強には、自分で物事を進めていく練習の機会がたくさんあります。
目標を明確にする。取り組む範囲を決める。優先順位を考える。スケジュールを作る。進み具合を確認する。予定どおりにいかない場合に備える。
こうしたことは、受験勉強だけでなく、将来どのような仕事や活動をするにしても必要になる力です。
単に「計画を立てなさい」と言うのではなく、実際の学習を通じて、自分で計画し、実行し、調整する経験を積んでもらいたいと思っています。
3.メンタル
勉強を続けていれば、うまくいかないこともあります。
思ったように理解できない。なかなか成績が上がらない。試験が近づいて不安になる。緊張して、普段ならできることができなくなる。
そうした経験は、決して勉強だけのものではありません。
継続する力、平常心を保つ力、プレッシャーに対処する力、失敗から立て直す力。
実際の学習や試験を、こうした力を養う機会としても捉えています。
4.世界観・人間観を養い、自分自身を知る
そして、もう一つ。
世の中にはどのようなものがあり、人はどのように考え、行動するのか。
自分は何に興味を持ち、何を大切にし、何が得意で、どのようなときに力を発揮できるのか。
学習する内容を通じて、世界についての理解を広げると同時に、自分自身についても理解を深めてほしいと思っています。
これは、ほかの3つとは少し次元が違うかもしれません。
しかし、だからこそ、意識して並べておきたい項目です。
大谷選手のチャートに「運」が入っているのと、少し似ているかもしれません。
すべてをきれいに分類することよりも、大切なものを見失わないようにすることを優先したいのです。
専門的な学びと、汎用的な学びは、別々ではない
ここで強調しておきたいのは、教科の勉強に半分の時間を使い、残り半分を別の活動に使う、ということではありません。
同じ勉強の中で、専門的な内容と汎用的な力の両方を意識するということです。
例えば、数学の問題を解くとき。
もちろん、その問題に必要な知識や解法を理解することが第一です。
同時に、問題を分割して整理する、条件をそろえて比較する、わかっていることとわからないことを区別する、といった頭の動かし方も練習しています。
また、解けなかったときにどうするか、どこでつまずいたのかをどう見つけるか、といったことも考えます。
こうして身につけた力は、別の単元や科目にも応用できます。さらに、勉強以外の場面でも使える可能性があります。
逆に、こうした汎用的な力が育つと、目の前の教科の勉強も進めやすくなります。
つまり、二つは互いに支え合う関係にあります。
受験の成果と、将来の可能性
学校の成績を上げることや、志望校に合格することは、もちろん大切です。
それらは、本人の努力が形になった成果であり、現在の社会では、さまざまな機会につながる評価にもなります。
そして、実際にこのような方針で指導していると、個々の教科の理解が深まり、学習の進め方も改善され、結果として受験でもよい成果につながることがあります。
ただし、受験でよい結果を出すことだけを、最終目的にしたいわけではありません。
将来、何をするにしても、その分野に固有の知識や技能は必要です。
同時に、分野を超えて使える考え方や、物事を進める力、自分を理解する力も必要になります。
専門的な視点と汎用的な視点。
この両方を持ち、必要に応じて行き来できることが、将来の可能性を広げることにつながると考えています。
目の前のことに取り組みながら、もっと広いものを見る
大谷選手の曼荼羅チャートを見て、改めて感じるのは、目標達成を考えるときの視野の広さです。
高い専門性を身につけようとするとき、私たちはつい、その専門分野の内側だけで考えてしまいがちです。
もちろん、専門的な知識や技能を磨くことは欠かせません。
しかし、それだけではなく、もっと広い視点から、自分に必要なものを考えてみる。
そして、両方を切り離さずに、日々の取り組みの中で育てていく。
勉強も同じだと思います。
目の前の問題が解けるようになることを大切にしながら、その問題を通じて、もっと広い世界でも役立つ力を身につけていく。
そんな学びの積み重ねを、これからも大切にしたいと思っています。
使っている曼荼羅チャート例

