こんなことはしてもらったことがない(私もない)

フィクションの主人公はあっという間に成長します

  1. 挫折
  2. きっかけとなる出会い
  3. 勝利!

 しかし現実はどうでしょう。

 上記の1と2の間は悪戦苦闘が続きます。追い打ちをかけるような試練も訪れます。フィクションでもその部分は丁寧に描かれることが多いです。一方で、2と3の間はあっさりしていることが多いです。急にレベルアップした主人公は、勝利まで一直線に進みます。

 しかし現実はどうでしょう。

 コツは、掴んだと思えば逃げていき、また掴んだと思えば逃げていく・・・。それを続けていくうちに、気がついたときには、以前できなかったことができるようになっている、というものではないでしょうか。また、「きっかけ」や「コツ」というものも、後から振り返れば「あれがきっかけだったな」「これがコツだ!」とわかりますが、渦中にいる間は何が正解なのかまったく見えないというのが現実ではないでしょうか。

 つまり、2は後から気づくものであって、1〜3の間には、成功の見えない地道な努力がずっと続いているのが現実ではないでしょうか(地味すぎてフィクションとして取り上げづらい)。


国語の勉強の一環として

 最近野球に興味を持ち始めた小学生と一緒に『フルタの方程式』という本を読みました。一般書ですので、小学生には読めない漢字や、初めて見る言葉もあります。また助詞の読み飛ばしや、イントネーションの誤りも小学生には多いです。一つ一つ指摘しながら続けていけば、何度も出てくる漢字は読めるようになっていきます。また内容理解については、口頭で少し確認した後は実践練習です。

「じゃあ、本当にショートバウンドの取り方をやってみよう」

最初はなかなかうまくいきません。うまくいかなかったら、本に戻ります。なんて書いてあったけ?

何度も何度も、繰り返します。

「今のよかったね!」「あー、ちょっと失敗したね」

何十回も、何百回も・・・(大袈裟でなく)


その日、お母さまからメールが届きました

「こんなに喜んでいるのは、最近見たことがない。なかなか自分達ではできていなかった」

という内容でした。そういえば私自身もこんなに丁寧にしてもらった記憶はないな(就学前はあっただろうけれど)。そんなに暇?な大人も周りにいませんでしたし、友達に頼むのはなんだか悪い気がしていました。

家庭には日常生活がありますし、学校や塾は、先を進めることやみんなと歩調を合わせることが重視され、一人にそこまで付き合いきれないでしょう。また一般に、単調な練習に付き合うのはなかなかに辛抱のいることです。ずっと付き合ってくれる友達がいればいいですが、子どもはたいていそんなに我慢強くありませんし、友達に対して「気が引ける」と遠慮する子も少なくないと思います。(結果としては、ジャイアン的な子が上達しやすいでしょうね)

基本動作をスムーズに

 基本動作がスムーズにできるようになる練習を私は重視しています。基本動作(例えば数の数え上げ)がスムーズになれば、計算は簡単にできますし、その後応用問題になってもそれほどつまづくことはありません。だから無闇に難しい問題を解かせるのではなく、基礎に対する意識づけを強くしつつ、細かな時間で遊びのように練習できる方法も一緒に考えています。

 基礎的な練習を続ける上でもう一つ強調したいのは、「基礎は共通している」ということです。対象を認識し・解釈を加えて理解し、ポイントを掴んで再現性を高めるということばかりやっています。上手な見方というものはありますし、理解しやすい頭の使い方もあります。再現性を高めるための練習方法も共通性が高いです。算数でも国語でも野球でもゲームでもお手伝いでも、基礎は共通しています。

 おすすめできないのは、ただ計算ドリルをたくさんやるような勉強の仕方です。他の分野への波及効果は見込めないばかりか、計算力もそれほど向上しないでしょう。一人一人、発達段階が異なります。もうできることを延々と練習しても意味がないですし、まったくできないのに量をやれと言われても嫌になってしまうだけです。それぞれの段階に合わせて進めるとともに、この問題を通じて何を試されているのか、どうしてこの順番で出されているのか、なぜミスが出たのか、どのようなタイミングで復習すると良いか、そもそも足し算って何をやっているのか・・・こういうことを少しずつ問いかけるのが良いと思います。そうしていると共通性が見えてくると思います。

 もちろん、高いレベルに行けばその競技固有の技能は必要になりますが、たくさんの可能性のある子どもが過度な専門的トレーニングをする必要はないと思います。可能性を潰さないことが子どもの成長過程おいては大切だと考えています。

 競争させてふるいにかけて、上澄だけを集めた中でまた競争させ・・・子どもたちを選抜していく教育システムは、社会が発展過程でかつ子どもの人数が多かった時代にはうまくいきましたが、現代の日本では合わなくなってきていると思います。遊びの一環として、競争も取り入れた方が盛り上がっていいですが、一人一人の特徴に合わせて伸ばしていくのがこれからの在り方だと考えています。


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