禍々しいホームラン

 


禍々しいホームラン

私がファンだからなのか、入団時から可愛い可愛い、目に入れても…それは無理か。まあ目に入れるのは無理なんだけれども、
とにかく、村上選手
村上選手のホームランは、なんだか他の人のそれとはまったくの別物に見えてしまうのです。一言でいうなら、禍々しい。悍ましい、見てはならないものを見てしまったかのような感覚。。。そんな感覚を齎すのは私にとって、村上選手のホームランだけなのです。

禍々しさの誕生

2022年
そのシーズンの中でも特に、高津監督が余計なことを言った七夕の日の翌日から、シーズン最後の締めくくりとして56号を打つまでの3か月ほど。

見ていて気持ちが悪くなるほど、
何を見せられているのかと、脳を疑ってしまうほど、

単に数字として、記録としてではなく、
打っている場面、その試合の中での重要性、
打った相手投手、打った球、
打球音、スピード、ボールの軌道、飛距離、
バット軌道の見えなさ、
球場の雰囲気、その場にいた選手の表情、特に相手投手や主力打者が、呆れてしまっているような表情。
そんなことある? おかしいよ。
をさらに遠く追い越して、恐怖に近いものを私は感じていました。
こんなものは見てはいけない。良い子は絶対にマネしちゃいけないヤツだ。これは本当に野球と呼べるものなのか?

だけど、
目が離せない
釘付けになる。

これは、、、
理性が訴える。
  「滅多に見られるものではない! 見るべし! 決して見逃すべからず!」
感性が吠える。
  「なんじゃこりゃー!

ありがとう。
見せてくれてありがとう。
有り得ない、有難いものを見せてもらった奇跡に感謝。

禍々しさの代償

2022年。
前半はチーム全体が好調。6月中にマジックが点灯するかも…という勢いでした。もちろん、村上選手の活躍もあったのですが、チーム全員調子がいいところに、乗せてもらったところもあると思うのです。22歳の若者です。

しかし、運命の七夕。
そして、その翌日。
主力選手全員(+つば九郎)がコロナに罹患し、ニ軍へ。
チームは、村上選手以外ほとんどが、昨日まで二軍の試合に出ていた選手たちに入れ替わりました。チームの勝敗が、一人の選手の肩にのし掛かっている、と。少なくとも、村上選手は感じていたのではないでしようか。

その後のホームランはどれを取っても禍々しい。打席での集中力からして、普通じゃない。

https://youtu.be/RyialDnNtWM

客観的な状況からすると、チームには前半の貯金があり、他の選手ももちろん活躍しています。コロナ罹患者も戻ってきます。そんなに気負わなくても、そんなに重圧を感じなくても大丈夫です。
もしかしたら、甲子園で活躍した経験のある選手なら、もっとうまく立ち回れたと思うのです。しかし村上選手にはそれができなかった。すべてを背負って、刀折れ、矢尽き果てたチームの、経験不足を否めないヤングスワローズの先頭に立った。そして神がかりになった。スーパー村上くん

55号を打った後、ぱったりとホームランが止まってしまいました。いろんな要因があったでしょう。完全に悪いわけでもなくて、いい当たりもありました。でも、ホームランにはならない。55号を打って、優勝を決めて、まるで憑き物が落ちたかのように。。。
あの神がかりは、もう終わってしまったのか? 二度と見ることはできないのでしょうか。

きれいな村上くん

そういう意味では、56号は真に、人間村上くんが打ったホームランと言えるかもしれません。

その年のオフは、テレビなどに引っ張りだこ。禍々しさも完全に消えて、きれいな村上くんが、毎日ブラウン管の向こうで笑っていました。(ブラウン管って何ですか?)

その後の、WBCでの不振と一瞬の活躍

2023シーズンは、初打席ホームランから始まっての、人間村上くんの苦悩。

去年、極度の集中力を3か月継続して、神がかりに。
不思議なくらいにホームランになっていく。特に、試合を決める場面では。
村上選手自身が、一番怖かったと思います。
この状態はいつまで続くのだろうか?
終わりが来るのだろうか?
そうなった時、自分はどうなるのだろうか?
その恐怖に耐えて打ち続け、
そして、止まった

いや、止まらないでー。でも止まった
何かが少しずつ狂っている。結果がついて来ない。
数字だけ見れば、そんなに酷いわけでもない。
でも、本人の感覚としては、まったく手応えがなかったのではないかと思います。焦る。狂う。焦る。狂う。
23歳の青年です。

胡蝶の夢か

2024年シーズンも、焦りと狂いで揺らぎます。
2年前、何をやってもうまくいった。打つだけでなく、走っても、チームを盛り上げても、(守っても?)。盗塁を始め積極的な走塁が、チームを鼓舞し、いい結果につながりました。でも今は空回り。何をやっても裏目に出る。少なくとも、そんな気がする。
怖い。怖いけど、それを表に出せません。
24歳の若造です。

何もかもうまくいった自分、何もかもうまくいかない自分。
一体どちらの自分が、本当の自分なのでしょう?

悩んでも悩んでも 青い山

(青山プレップスクールに来れば良いのにね。そしたらたぶんこう言われるよ。本当の自分なんてない。というか、すべてが本当の自分なんでしょうね。過去の記憶は、どうしても頭をかすめるでしょう。それと戦い続けるのもいいけれど、私は、新天地で何もかも新しく始めるのがいいと思いますよ。もちろん、私は寂しくなりますがね)

2024年シーズンは。何となく終わってしまいました。
来年(2025)は、予定では日本プロ野球最終年。翌年以降は、メジャーリーグでの活躍を目指します。オフには相当な覚悟で身体を絞り込み、着々と準備は整っていた。。。はず。

そんな春先に怪我。

時分の花、まことの花

そんなわけで、2025年シーズンは途中参加。
チームは最下位を独走し、ペナントレース自体もほぼ確定。あまり盛り上がらないまま、夏が終わろうとしています。

復帰後、30試合ほどで、ホームランは14本。
驚異的なペースではありますが、神がかってる感じはありません。
昨日(8月30日)には、バックスクリーンに3本。特大のホームラン。
3本とも、きれいに捉えた、きれいなホームランでした。

すわ! ここから奇跡の逆転ホームラン王

ないない、ないです。
そして、要らないです。

昨日のホームランも、
私の心を鷲掴みにした、禍々しさはありませんでした。

それでいいのです。
もしかしたら、私をはじめとするファンだけが、未だに禍々しさに捉われているのであって、村上くんはもうすでに次のレベルで次の戦いを始めていたのかもしれません。
おそらくそうでしょう。
過去に囚われたまま生き残れるほど、プロの世界は甘くない。

22歳の青年に宿った、3か月の奇跡
私も心の整理ができました。
禍々しくも美しい幻影を、今の村上くんに重ねないように。
今の村上くんを、今の村上くんとして見るように。

過去に囚われず、表に見えやすいものに惑わされず、
これからも応援させてもらいますよ。
生きるヒントが得られそうという下心を抱きつつ。

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