「運動指導の心理学」



翻訳してみます。


まえがき

「自然の不可思議の通訳者は経験である。経験は決して欺かない、ただ吾人の解釈のみが往々にして自らを欺くのである。」
レオナルド・ダ・ビンチ

本書は主に、教師・指導者を目指している人、ならびに現在指導している人でさらに自分の指導力を向上させたいと願っている人々に読んでいただくことを想定して書かれた。

本書の執筆に当たって特に考慮した点が二点ある。

1.実践と研究・理論の統合を特に強く意識した。

従来、指導の場において、伝統的に実践や経験が非常に重視されてきた。事実、われわれは経験から多くのことを学んできた。練習・指導に関する知見についても、経験が研究や理論より先行している面も決して少なくない。
ただし、われわれはしばしば経験の解釈を間違えるのである。例えばある指導法で成功するという経験をした指導者は、その様に指導すれば誰でもうまくいくと思ってしまう。しかし、そのような解釈が正しくないことは少なくない。
経験から欺かれることなく、経験を的確に解釈して指導に役立てるために重要な役割を果たすのが、研究とそこから生まれる理論なのである。

経験だけでは大きな限界がある。理論を学ぶことによって経験を正く生かすことが可能になるだけでなく、効果的な指導法を新しく工夫し生み出すことができるようになる。

2.学習・指導とモチベーションというテーマを相互に関連させ整合性を持たせた

学習とはそれぞれの教科に特殊性の高い能力としての技能を向上させる過程であることを明確にした。技能を学習によって向上させるとともに、獲得した能力を最大限に発揮してプレーすることで、他の教科では代えることが難しい、その教科独自の楽しさ・醍醐味を味わうことができるようになる。そして、そのような教科独自の楽しさ・醍醐味とは、自分自ら工夫し挑戦し自己決定的に教科と関わることにより有能さを獲得することにほかならず、このように動機づけられている状態が内発的動機づけである。

勉強に対するモチベーションにおいて内発的動機づけがすべてだということではない。しかし、内発的動機づけを中核に教科に関わるように指導することが大切であると著者は考えている。


多くの人、特に若い人は、こうすればすべての人がだれでも効果的に上達するという万能薬的な指導方法があると考えがちである。しかし、近年の研究から明らかになった事実に、適正処遇交互作用 Aptitude Treatment Interaction ATIという現象がある。わかりやすく言えば、学習者の適正によって処遇の効果が異なるというものである。

このことは、指導者は自分と学習者の置かれた環境を考慮し、学習者の個性に合った指導法を新たに工夫開発していく必要があることを意味している。



ポチっとお願いします。

blogramランキング参加中!

明日もがんばります。

このブログの人気の投稿

640時間の夏休みチャレンジ:日常の中の無限の学び

はじめにの読書会(154)『パズルで解く 世界の言語』

『いちばんすきな花』が好きすぎて・・・カルタ作って正月遊ぼう